BtoC事業における成功・失敗要因の分析と
パチンコホール産業への戦略提言
 

 

鈴木 仁様

芝浦工業大学専門職大学院

BtoC事業における成功・失敗要因の分析とパチンコホール産業への戦略提言

Analysis of success / failure factors in BtoCbusiness and strategy proposal to pachinko hall industry

研究カテゴリー[ 調査型]

 

 

ABSTRACT

When we examine business strategy, a precedent example of companies walking a way of success / failure each includes many suggestions. This study analyzes success / failure factors of these companies which belong to BtoC business and applies these factors to pachinko hall industry. And then strategy for success is proposed as results of the research.

 


1.はじめに

わが国経済が量的に拡大していた時代には、成長性の高い分野において事業を展開することが成功のための重要な要因であった。例えば家電製品などで見られた2番手戦略は、成長分野や成長商品の選択を確実に行う点で時代に合った合理的なものであったと言える。

現在でも、成長性の高い分野としてはIT、遺伝子工学、ナノテクノロジー、環境などが挙げられる。しかしながら最近のネットベンチャーブームの収束に見られるように、成長分野においても競争・淘汰のスピードが速く、これらの分野の企業だからと言って成長性が高いとは言えなくなっている。一方で、食品や流通など業界全体としての成長性が高くない分野においても、景気低迷に苦しむ既存企業と対照的に急成長している企業がある。

成長分野の事業であるか否かに関わらず、急成長している企業は既存企業にはない特長を持った個性的な企業である。言い換えれば、急成長企業の成功要因は、「明確に差別化されたビジネスモデルをいかにして確立したか」に尽きると言える。従って、差別化の具体的内容を一般化しようとしても、有効な成長分析にはならないと考えられる。製品・サービスのライフサイクルが短期化し、ニーズの変化と供給側の対応のスピードが更に加速している今日、個々の成功事例の要因となった「個性」を模倣したのでは、成功にはつながらないのである。

そこで、急成長企業の先行事例から示唆を引き出すためには、「個性」を見ていくことが非常に重要であり、同時に、そこからある程度の共通性やパターンを抽出するための視点が必要になってくる。

本研究では、ビジネススタイル(価値創造の土壌)として特にBtoC事業を取り上げその分析を試みる。それぞれ極めて個性的な事例であるだけに、網羅的かつ体系的な視点を求めるのには無理がある。しかしながら、それぞれ異なる視点から事例を分析することにより、様々な示唆が得られるものと考えられる。

 

2.研究の流れ

1)         BtoCビジネスの位置付けと、成功企業・失敗企業の分類定義を行い、近年成長著しい企業15社、および業績が低迷している15社をそれぞれ選別する。

2)         その成功・失敗要因を、@機能別戦略Aビジネスドメイン(市場分野)の2つの視点で分析・分類することで共通項を見出し、一般化する。

3)         成功要因や評価のポイントは、最終的には個々の企業の実態に即して検討されるべきである。よって、実例としてBtoC事業における成功要因をパチンコホール業界に当てはめ、その戦略提言を行う。

 

3.BtoCビジネス

個人の価値観やライフスタイルの多様化、企業を取り巻く経済環境の急速な変化などを背景に、今日のサービス産業には従来とは異なるニーズへの迅速な対応が求められている。急成長しているサービス産業タイプの企業は、既存企業にはない特長あるビジネスモデルを築いたり、新しい業態や市場を創造したりすることによって、競争の優位性を確立している企業である。

「ゆとりと豊かさの追求」という言葉は、90年代の経済不振の中で一見色褪せてきているようにも見えるが、依然としてわが国消費経済の基本的な潮流であり、暮らしのゆとりや精神的な豊かさを求める傾向は2000年代も継続して進展するものと予想される。高齢化の進展は、消費ニーズの質・量の変化をもたらすと共に、労働力供給面の制約ともなり、サービス産業がこれにどう対応するかは重要な課題である。情報通信技術の進展・普及も、単なる合理化・省力化にとどまらず、サービス産業の構造変化を促す。対企業サービスにおいては、急速な環境変化に対応する競争がますます激しくなる中で、合理化のためのアウトソーシングや外部の専門機能の利用ニーズが高まると共に、サービスの内容や価格に対する目もますます厳しくなっている。

 

4.事例企業の選別

4-1  成功企業失敗企業の定義

本研究では成功企業、失敗企業の分類を次のように定義する。

 

成功企業

1.    BtoC事業をメインとする企業

2.    株価純資産倍率10倍以上

3.    株主資本利益率10%以上

4.    上記条件を満たした、過去3年間の平均売上成長率上位15

 

失敗企業

1.    BtoC事業をメインとする企業

2.    株価純資産倍率1倍以下

3.    株主資本利益率0%以下(赤字企業)

4.    上記条件を満たした、過去3年間の平均売上成長率下位15社

※2006年1月1日のデータを使用

 

4-2   株価純資産倍率(PBR)

PBR(Price Book-value Ratio:株価純資産倍率)は、経営基盤となる資本金などの株主資本(自己資本または純資産)を基準にして、株価の高低を相対的に測る指標。

PBR=株価/1株当たり株主資本

PBRの基準となる株主資本(純資産)とは、すべての負債を支払ったあとに残った資産、要するに「会社の解散価値」のこと。

例えば、PBR10倍の株の場合は、成長性などが見こまれて、会社の解散価値よりもはるかに高い値段で取引されていると言え、逆にPBR0.5倍なら企業の解散価値の半分の価格で取引されているわけで、極端な話、株を買い占めて解散してしまえば倍の価格で売れることになる。

 

4-3   株主資本利益率(ROE)

ROE(Return On Equity:株主資本利益率)は株主資本を使ってどれだけ利益をあげたかを見るのに用いる指標。

ROE 当期純利益 / 株主資本 × 100

純利益の伸びが株主資本の増加率を上回る場合に上昇するケースが一般的。純利益が減少する場合でも、株主資本がより減少すれば株主資本利益率は高まる。資本効率を重視する企業の間では、配当の増額や自社株買いなど株主への利益配分を増やすことによって株主資本の過剰な増加を抑え、株主資本利益率を高めようとする動きが目立っている。

 

4-4   上記指標を用いた理由

本研究での成功・失敗の判別基準は、あくまで株式市場が合理的に機能しているものであることを前提にして、PBRを用いている。

つまり、PBRの倍率が大きい企業はそのブランドや戦略、将来性などのいわゆる『見えざる価値』があるということ。

 

 


図1 企業の見えざる価値

 

ただ、PBRが大きくても今現在利益を上げていない企業も少なからずあるが、そういった企業は現時点では成功企業とはいえない。

よって、実際に利益を出している企業を選別するためにROEの指標も基準に加えた。

 

4-5   成功企業・失敗企業の抽出と企業概要

今般の選別基準を元に2006年1月1日現在のデータを用い企業を抽出、次にその概要を示す。

 


表1 事例企業一覧

 

 



5.   事例企業の分析

5-1   機能別戦略

企業戦略は、事業戦略と機能別戦略に分類することができる。事業戦略とは、企業が複数の事業からなる場合、個々の事業について、どのような事業戦略をとるべきかをまとめるもの。それに対し、機能別戦略とは、企業を機能別に見た場合に、それぞれの機能でどのような戦略をとるべきかの視点でみるもの。

本研究では企業の戦略を機能別に12分割(表2)し、事例企業がそれぞれどこに強み(弱み)を持っているかを抽出(表3)。成功企業群と失敗企業群との比較、考察を行う。

なお、抽出にあたっては会社四季報およびモーニングスター社のアナリストレポートで触れられている項目を強み○、弱み×とし累計数は強みをプラス1、弱みをマイナス1としてカウントする。

 

表2 企業戦略の機能別分類

 

 



表3 事例企業の強み(弱み)の所在

 

 



表4 成功企業・失敗企業累計数の比較

 

 


※差=成功企業累計−失敗企業累計

 

5-2 機能別戦略における考察

表4での差の大きい項目がBtoC事業において重要な戦略であるといえる。今回はこの成功企業・失敗企業の間での格差が大きかった5項目についてそれぞれその特徴と考察を行う。

・販売戦略

成功企業ではターゲットの絞込みよりも、囲い込み(関連商品の販売など)が功を奏しているケースが多い。また、仕入から販売までのルートは外部委託ではなく独自の仕組みを持っている。

・情報戦略

成功企業ではITを活用した商品・サービスの情報発信が効果的に行われている。また、それが新たな成長市場を創り出すことにもつながっている。

・価格戦略

失敗企業の多くが無計画な安売りで赤字を生み出している。新たな付加価値を提供する能力が無い企業は、たとえ歴史ある企業でも価格競争で敗れる。

・子会社・買収戦略

成功企業は積極的にM&Aを行っている。生産から販売まで手がける垂直型統合よりむしろ水平型統合が多く見られたが、ライブドアのような問題も浮上してきている。本質的な事業シナジーが得られるかを見極めていく必要がある。

・商品サービス戦略

コンテンツ(アニメなど版権)が商品の売れ行きを大きく左右する傾向が強くなってきているため、業界を問わずコンテンツの獲得力が勝敗を決める。サービスに関しては技術的に優れていなくても、一味違うものを持っているかがカギ。

 

5-3 ビジネスドメイン

企業が優先的に資源を投入すべきビジネス領域をビジネスドメインと呼ぶ。ビジネスドメインの定義、すなわち「我が社の事業はどういうものであり、これからどこへ向かおうとしているのか」を表現することは、戦略決定の基本となる重要な問題であり、同時にその企業の姿を端的にあらわすものである。

このビジネスドメインの具体例として、古典的なものでは「(米国の)鉄道は自らを輸送事業と考えるのではなく鉄道事業と考えてしまったために、自分の顧客を他に追いやってしまった。」といった例を挙げ、物理的定義(この例では鉄道)よりも機能的定義(この例では輸送)を推奨した論文が有名である。また、NEC がかつて掲げた「C&CComputers & Communications)」は、通信のデジタル化とコンピュータの分散処理化傾向の先に通信技術とコンピュータ技術の融合を見通した先見性に基づくドメインの定義であるが、同社に限らず社会的に「C&C 化」が進展してきたことで、個別企業にとって有効なドメインの定義ではなくなってしまったとも評される。

ドメインの役割をまとめると次のようになる。

1)自社の事業活動の範囲を決定し、

2)自社の価値観にない事業展開を制御し、

3)多角的な経営によって分裂する組織の一貫性を醸造する働きがある。

また、ドメインのタイプとしては「顧客」、「ニーズ」、「コア・コンピタンス」といったものが一般的だが、本研究では特に「市場成長率」「市場シェア率」、「サービス水準」「対象顧客」といった軸を用いて事例企業の分類を行う。

 

 


図2 市場成長率と市場シェアによる分類

 

 

 


図3 サービス水準と対象顧客による分類

5-4   ビジネスドメイン分類での考察

図2より、失敗企業は成長市場への展開が出来ていないことがわかる。成熟市場で大手シェアをとっても、新たな付加価値を提供できなければ市場と共に衰退していく。一方、成熟市場で成功している企業はコストダウンやイノベーションにより計画的に低価格で商品を提供しているかもしくは、強力なコンテンツによる差別化が行われている。

図3より、一部のマニアや富裕層向けのビジネスを展開している企業は少ないことがわかる。そこで成功するためにはかなり高水準の技術・サービスが必要とされる。失敗企業の多くは不特定多数を対象に他社並みのサービスを提供している。そこで成功している企業はやはり他社にマネの出来ない高水準のもの、あるいは一味違ったものを持っている。

 

6.  企業の成長可能性の評価ポイント

6-1   ビジネスモデルの強みとコア・コンピタンス

急成長する企業には、成功の要因が必ず存在する。それらは各企業に固有のものではあるが、特にサービス産業について以下にその評価ポイントを示した。

1)顧客ニーズを把握するマーケティング力はあるか

21世紀のネット社会では、消費者(顧客)主導型の商品開発が常識化するため、いかに早く消費者(顧客)のニーズを的確に把握してスピーディーに商品化できるかが勝負の分かれ目となる。顧客のニーズを把握するマーケティングのシステムを構築できるかが成功への大きな鍵となる。

2)人材の活用に優れているか

サービス産業タイプの場合、労働集約型のビジネスモデルが多いため、優秀なビジネスモデルを実践する現場の人材を、いかに有効に活用できるかが求められる。

3)ユーザーの感性に働きかける商品開発力があるか

サービス産業は、ユーザーのニーズに応えるサービスの提供が基本である。ユーザーは人であるため、人の感性や意識に働きかけるような商品開発ができれば、ユーザーの行動を起こさせることができる。こうした企画開発力をもつことが成功要因の一つとなる。

4)戦略的な提携をおこなっているか

自社にない機能を補完するような提携を行うことにより、ビジネスドメインを拡げたり、より強固なビジネスモデルの構築を推進することができる。

 

6-2   経営者に求められる点

企業の成長は、経営者によって大きく左右される場合も多い。以下に企業の経営者に求められる点について整理した。

1)社員と価値観を共有しているか

社員がやる気を起こして、会社ぐるみでベンチャー精神を発揮できるような社風があることが望ましい。

2)明確な経営ビジョンを示し、実行しているか

変革の激しい今日には、経営トップが常に明確なビジョンを示して、その上で次の一手の具体策を率先して実行するというようなリーダーシップが求められる。

3)変化に対する適応能力に優れているか

ドッグイヤーと称されるほどに商品寿命が短くなっているため、常に環境の変化に対応できる能力が必要となる。そのためには、情報を収集して取捨選択し、独自の発想や考え方で対応策を打ち出せることが望ましい。

4)スピーディーな決断システムとなっているか

成長する企業には、成長速度が加速する契機となったターニングポイントが必ず存在している。市場環境の変化や営業面、財務面の大きなトピックスがそれに当たる場合が多いが、その際の経営トップの決断がその後の成長軌道に導いた例も少なくない。現場や中間層の意見や情報を吸い上げて、スピーディーに決断が下せる経営ができているかが重要である。

5)戦略と戦術のバランスはとれているか

企業の成長のためには、単年度の業績を向上させるための明日の戦術と、中期的に安定成長させるための戦略の両者とも大変重要である。それらのバランスのとれた経営方針を打ち出すことが、企業が継続的に成長するためには求められる。

 

7. パチンコホール産業のあらまし

7-1  パチンコ業界の現状

市場規模のグラフ 

 


図4 パチンコ市場規模推移

参加人数・平均回数 

 


図5 パチンコ遊技人口の推移

図4および図5より、売上規模は約30兆円弱と横ばいだが、遊技人口は確実に減少している。これは一人当たりの使用金額が増加していることを意味し、ヘビーユーザーへの依存度が高くなっているといえる。

 

 

 


図6 パチンコ店舗数の推移

 

 

 


図7 パチンコ遊技台数の推移

 

図6および図7より、遊技場の数は年々減少だが遊技機の台数は横ばい。これは激しい競合により淘汰が進み、なおかつ勝ち組ホールの大型化が進んでいることを表している。

 

7-2 今後の方向性と危機感

パチンコ業界の現状と今後の方向性を前段のビジネスドメインの分類で見ると次のようになる。

 

 

 


図8 パチンコ市場の方向性

 

 


図9 ホール業態の方向性

 

成熟市場でのシェア率アップで成功しているケースは本研究の事例には含まれない。よって、この業界では新たな業態開発などによる成長市場の創造が必要。また、一部のマニアや富裕層といった特定顧客に対して、他社並みのサービスを提供して存続している企業は存在しない。

業界が生き残るためには再びパチンコを大衆娯楽に回帰させるか、もしくは量販店のような大型化、低価格化のみを推し進めるのではなく、マニア向け・富裕層向けなどの専門店のようなもの、またコンビニ感覚で立ち寄れる店舗など様々な業態の店舗開発が必要である。

 

7-3 パチンコ業界成功のための機能別戦略

事例企業の研究で重要とされた機能の戦略を、パチンコ業界に当てはめてみると次のような提案が出来る。

・販売戦略

パチンコ関連商品の企画・販売をホール側の視点さらにはエンドユーザーの視点で取り組み、収益に結びつける(現在はメーカーが行っているのみ)。経営者は短期的なシェアの獲得競争ばかりではなく、明確なビジョンを持って中・長期的な販売計画を策定すると共に、そのための人材育成・獲得を図っていく。

・情報戦略

現在のパチンコホールは新聞の折り込みチラシ、ダイレクトメールといった広告宣伝を主体としている。近年ではホームページや携帯メール送信などの情報提供も行っているが、情報の発信だけでなく顧客のニーズを受け止めそれをサービスや機種構成に反映させる(POS技術の導入と商品の単品管理、webマーケティングなど)。また、既存顧客へのアプローチだけではなく、現在パチンコを打たなくなってしまったスリーピング層、まだパチンコを打ったことがない新規顧客といった成長市場を創り出す情報技術を開発・導入していく。組織面ではスピーディーな意思決定と、その通達が全社員、パート・アルバイトにまで行き渡る組織としていく。

・価格戦略

パチンコホールにとっての価格戦略はすなわち出玉である。店舗開発コスト、オペレーションコストの削減により原価を抑えていくことは必要不可欠ではあるが、価格競争は失敗企業の主要要因である。出玉を売りにしたアプローチは業界の衰退を加速させる。顧客は出玉で惹くのではなく、楽しくくつろげる時間・空間などといった新たな付加価値形成していく。

・子会社・買収戦略

事業シナジーの期待できる他産業との積極的提携を進めていく。ショッピングセンターやデベロッパーをはじめ、コンテンツ関連企業、IT企業との提携によるメディア戦略も考えられる。

・商品・サービス戦略

現在では消費者主導型の商品開発が常識化している。小売・流通業界ではスーパー、コンビニをはじめ、メーカー側ではなく販売側が顧客ニーズにあった商品を企画、仕様書発注し、より安くて良い品であるプライベート・ブランド商品を作り出している。また、これらは非常に利益率の高い商品でもある。パチンコ業界では未だ遊技機に関してはメーカー主導のプロダクト・アウトの体質が続いている。この業界でマーチャンダイジングを実現するためには、法的な問題やステークホルダー間の利益配分の駆け引きなど多くの課題があるが、消費者本位で考え、産業全体の発展のためにホール、メーカー間の協力関係を強化して、顧客のニーズを的確に把握してスピーディーに商品化していく。

 

8. 米国ネバダにおけるカジノ発展のあらまし

8-1 ネバダカジノの所有と資金調達

歴史的に、カジノはその運営の経験のある人々によって、所有され運営されてきた。その変遷は日本のパチンコ産業と同じである。彼らは自分の現金や事業仲間、あるいは友人知人から集めた金を、営業の資金としていた。1980年代後半まで、ゲーミング産業の株式上場の会社はほんの一握りに過ぎなかった。ゲーミングがニュージャージーやネバダ以外の州に広がり始め、現在のカジノ・リゾートに必要な5,000万ドルから10億ドルにのぼる資金を調達できる私的な資金源を見つけるのは徐々に困難になってきた。投資資金を持ち、またゲーミング統制官の身元調査に合格できるような人達でも、徹底的に踏み込んだ調査を受けることに進んで身を置く人はあまりいなかった。また、個人や小さな所有者グループは、拡大するゲーミング産業に必要な資本を提供する力はなかった。

当初は、カジノに喜んで貸し付ける銀行は殆どなかった。銀行がカジノ企業を正当な事業として取り扱うのを嫌がった為である。しかし今日では、主要なカジノ企業に信用供与をする世界中からの大型銀行団が形成されている。ウォール街は、ゲーミング発展のための資金を、公開公募の借入や転換社債で調達できるようになってきており、またその方向で積極的でもある。競争力のあるカジノを建設したり維持するために必要な巨額の資金を公開株式市場を通じて調達する能力は、米国のゲーミング産業の性格そのものを変えてしまった。既存のゲーミング企業が株式公開を行うと同時に、ホスピタリティー産業における上場している大企業がカジノ企業を買収した。今日、30以上の上場企業がカジノを経営しており、その中には最も実力のあるカジノも含まれている。これらの企業の株主には、大規模な年金財団、共済組合、保険会社が含まれている。彼らは、ゲーミング企業を有利な投資先と考えている。その結果、カジノ所有権は、カジノ経営者の手からウォール街やメイン街で取引される企業へ移ってきている。

 

8-2 公開市場で取引されるカジノ企業の影響

ゲーミング産業の企業が公開市場で取引されるようになった影響は、資本調達能力の領域を超えたものになってきている。ゲーミング経営者は、伝統的に秘密主義なところがあり、収入や経営に関連する情報を隠す傾向があった。上場企業の公開義務を果たすことは、カジノ経営者を遥かにオープンで協力的にした。その結果、監督・立法当局、投票者、顧客、また一般市民を含めた公衆全体が、カジノ運営についてよく知り、カジノに関してより理解した上での個人的政策的決定が出来るようになってきた。

上場ゲーミング企業の経営者は、企業の株価に影響するようなスキャンダルを避けようとして、元警察当局の職員や法律の専門家を雇用し、保証や債権回収調査に当たらせるようになった。上場企業は、一般に、独立した一流の会計士を有していなければならないため、ゲーミング産業は世界的にも最も優秀な会計士を持ち、カジノのための内部統制システムを見直し改善してきた。ウォール街は収益を求め、よい収益とよい経営には高い株価を持って報いる。このようして、カジノ経営者は収益を最大にするように刺激される。これらが、カジノ経営における大きな変化であった。政府の公的政策の点からは、かつてのカジノ所有形態の下にあった時と比べると、カジノの株主と州の関心は、遥かに密接な提携関係に変わってきた。

 

9. パチンコホール投資ビジネスによる業界活性化

不動産投資熱の高まりとともに、オフィス系、レジデンス系は物件がどんどん高騰し、利回りが低下してきている。

そのような中で、投資対象として残された数少ない物件のひとつがパチンコホールである。一例を挙げれば、台売り3万円、300台のホールだと、年間の売上高は30億円になる。この場合、小口のファンドで投資するとしたら、投資利回りはグロスで10%を達成する収益モデルを組みたてることが可能。

しかし、このようなパチンコホールへの投資はどのようにしたらいいのか、パチンコホールへの投資をする場合の融資はどこから引っ張れるのか、リスク要因はどこに潜んでいるのか、少額の自己資金でパチンコホールに投資するにはどうすればいいのかなど、一般の投資家には業界の内情があまり広く知られていない。

このような業界の特殊性を明らかにし、投資市場の醸成を行っていくこともパチンコ業界全体の活性化につながるものと考えられる。

 

10.今後の研究課題

今回の戦略提言はパチンコホール業界全体を対象としたものであったが、今後は個別企業への適用のフィジィビリティ、また一部実践に移している企業の検証を進めていきたい。研究後半では公開市場での資金調達が米国カジノの発展と健全化に結びついた例も上げたが、2005年12月29日、パチンコホール企業のピーアークがジャスダック証券市場へ上場申請を行った。これが認められれば業界初となり、今後はその動向も研究していきたい。

 

11.おわりに

普遍的に変わることのない定理や公式といった自然科学的なものは、しかしながら2、3年もすれば陳腐化した知識としてその優位性、競争力を失ってしまう。

一方、歴史、哲学また今回取り上げた経営戦略などの社会科学的なものは、まったく同じことをやっても時代や環境によって違う結果が出てしまうものであるが、知識として蓄積されていく研究であると感じた。

 

12.参考文献および資料

1)       西村克己:『よくわかる経営戦略』日本実業出版社

2)       西村克己:『戦略構想力が身に付く入門テキスト』中央出版

3)       キャサリン・ステイリー:『空売りの美学 堕ちる企業を見破るプロの投資術』日経BP出版

4)       財界編集部:『史上最強のパチンコチェーン ダイナム』(株)財界研究所

5)       パチンコ業界専門誌 プレイグラフWEB

6)       榊原清則「企業ドメインの戦略論 構想の大きな会社とは」中央公論新社

7)       D.F.エイベル「事業の定義」千倉書房

 


 
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